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「生物多様性保全のための情報整備と人づくりに向けた国際シンポジウム
-東・東南アジアにおける生物多様性の損失を抑える- 」開催
東・東南アジア地域は、世界的に見ても生物多様性が非常に高いのにもかかわらず、 それらに関する情報の収集・整備が十分に行われていません。 また、生物多様性保全のために必要な分類学の知識と能力を持つ人材が不足しています。
平成20年度から始まった東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(East and Southeast Asia Biodiversity Information Initiative)事業 (以下、ESABII)は、これらの地域の国々、関係機関の参加のもと、生物多様性条約の履行、各国の生物多様性国家戦略の策定・見直し、 様々な保全施策等に直ちに利用することができる生物多様性情報インベントリーを整備し、生物多様性保全に必要な分類学の能力向上のための地域行動計画策定とプログラムの実施を推進することで、 東・東南アジアの生物多様性保全の推進と生物多様性条約の2010年目標の達成に貢献することを目的とした国際協力プロジェクトです。
平成21年1月21日(水)に、東京都渋谷区にある国連大学のウ・タント国際会議場で 「生物多様性保全のための情報整備と人づくりに向けた国際シンポジウム -東・東南アジアにおける生物多様性の損失を抑える- 」が、 このプロジェクトの第一歩として開催されました。
東・東南アジアの生物多様性保全の推進と、2010年に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が日本で開催されることを踏まえ、東・東南アジア の各国とともに生物多様性保全の推進の現状と求められているもの、また、これに対し日本がどのような貢献をすることが可能かを議論するためです。
プログラム | ||
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◎基調講演 | 兵庫県立人と自然の博物館 | 館長 岩槻 邦男 |
◎シンポジウムの目的と背景 | 「東・東南アジアにおける生物多様性情報インベントリーイニシアティブの目的と背景」 | 環境省生物多様性センター 阪口 法明 |
◎午前の部 生物多様性 インベントリーと情報 |
「生物多様性条約のもとでの世界分類学イニシアティブ(GTI)と東・東南アジア生物多様性インベントリー」 | 生物多様性条約事務局 志村 純子 |
「中国における生物多様性の記録と電子化」 | 中国科学院植物研究所 Dr. Ma Keping |
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「研究資源としてのGBIF及び生物多様性データベース :魚類データベースが解明する黒潮の役割」 |
国立科学博物館標本資料センター 松浦 啓一 |
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「ASEAN生物多様性センターにおける生物多様性地理情報システム」 | ASEAN生物多様性センター(ACB) Mr. Rodorigo U. Fuentes |
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◎午後の部 生物分類学のためのキャパシティビルディング |
「ベトナムの分類学におけるキャパシティビルディングの必要性」 |
ベトナム自然資源・環境研究センター(CRES) Dr. Vo Quy |
「西太平洋・アジア地域生物多様性一斉観測(DIWPA-IBOY)と分類学キャパシティ・ビルディング」 | 北海道大学低温科学研究所 戸田 正憲 |
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「ASEAN生物多様性センターにおける生物多様性地理情報システム」 | インドネシア科学院生物学研究所 Dr. Ahmad Arief |
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「生物多様性保全と情報システムの構築」 | 韓国環境省国立生物資源研究所(NIBR) Dr. Byoung-Yoon Lee |
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「大学における生物分類学研究者の育成」 | 鹿児島大学 鈴木 英治 | |
◎パネルディスカッション | インドネシア科学院生物学研究所動物局局長 Dr. Ahmad Arief | |
山階鳥類研究所鳥類標識研究室長 尾崎 清明 | ||
韓国環境省国立生物資源研究所上席研究員 Dr. Byoung-Yoon Lee | ||
生物多様性条約事務局プログラムオフィサー 志村 純子 | ||
国立環境研究所生物圏環境研究領域長 竹中 明夫 | ||
北海道大学低温科学研究所教授 戸田 正憲 | ||
環境省生物多様性センター長 鳥居 敏男 |
兵庫県立人と自然の博物館館長(非常勤)、東京大学名誉教授
兵庫県出身。京都大学,東京大学,立教大学,放送大学を経て現職。中央環境審議会委員,ユネスコ国内委員会委員や(社)日本植物学会,(社)日本植物園協 会,国際植物園連合,日本植物分類学会の会長などを歴任。(財)WWF-ジャパン常任理事,生物多様性ジャパン代表など。国際生物学賞委員会,コスモス国 際賞委員会の委員や日本国際賞審査委員なども務めている。日本学士院エジンバラ公賞などを受賞,文化功労者。
国連環境計画生物多様性条約事務局、プログラムオフィサー。主要な担当分野は外来生物および分類学。遺伝子資源へのアクセスと公平な利益分配に関する事務局内タスクチーム兼務。
1984年、東京大学大学院卒、保健学博士。東京大学医学部免疫学教室を経て、理化学研究所、ライフサイエンス研究情報室、同研究所培養生物部において微生物多様性および生物種学名標準化プロジェクトに参画。
2000年から国立環境研究所において、生物多様性保全情報と分類学イニシアティブにおける研究課題を推進し、2007年から現職。
中国科学院の植物研究所の所長であり,植物生態学を専門に研究している。主に,生物多様性とその保全についての研究に従 事しており,160以上の論文を発表し著書も10を数える。中国における生物多様性調査を始めた研究者グループの一人として,多様性保全の様々な活動に中 心的に関わっている。
生物多様性の研究とその保全に関し国際的に活動しており,IMoSEB(生物多様性に関する科学者の専門会議)の執行委員会のメンバー,アジア会議の共同 議長を勤めた。また,GTI(世界分類学イニシアティブ)の調整機構のメンバーであり,その他の活動及び新たな仕組みの創設に貢献した。
1978年 北海道大学大学院水産学研究科博士課程修了水産学博士
現在、国立科学博物館標本資料センターのコレクションディレクター(兼任:分子生物多様性研究資料センター)として全館の標本資料の収集・管理・活用を推 進している。また、東京大学理学系研究科生物科学専攻の教授を兼任し、生物多様性分野の後継者養成を行っている。
現在、2007年10月からGBIF副議長に就任。魚類学会会長や日本分類学会連合代表を歴任し、生物多様性関連の学会活動に貢献している。
アセアン生物多様性センター 事務局長。
持続可能な開発及び都市・地域計画専門家であり、アジア開発銀行、世界銀行、海外経済協力基金、様々な国連機関でコンサルタントとして勤務、国連アジア太平洋経済社会委員会の上級環境官として勤務。
国連砂漠化対処条約アジア地域行動プログラム、その他条約締約国会議用の文書を作成・環境プログラム計画、プロジェクト開発、政策及び制度の評価、環境モニタリング・評価、環境管理・持続可能な開発における能力育成の専門家。
ベトナム国立大学(ハノイ)自然資源管理および環境研究センター(CRES)名誉所長
1956年に講師としてハノイ大学に着任。1980年から1990年まで学部長を務める。動物学および鳥類学者として、ベトナムの動物インベントリー作成 を指揮。ハノイ大学に最初の動物学博物館を創設する。ベトナム戦争による環境影響に関する研究の創始者。また、ベトナムの経済成長にむけた持続可能な開発 に関する環境政策の立案にも重要な役割を果たし、「ベトナムの国家保全戦略 」(1985)では初稿の編集および共著者となるとともに、「ベトナム環境法」(1989)ではその初稿を作成する。
北海道大学低温科学研究所 教授 理学博士
専門分野:昆虫群集生態学,ショウジョウバエ科の分類学・系統学・生物地理学。生物多様性プロジェクト:DIWPA-IBOYにおいて,森林生態系の無脊 椎動物の多様性観測を主導し,観測方法の標準化,各種トレーニングコースの企画と実施,データ管理環境の整備に貢献した。
1961年5月29日、西ジャワ、バンダン生まれ。
1987年よりインドネシア科学院生物学研究所(RCB-LIPI)勤務。
1985年 ボゴール農業大学卒業、琉球大学海洋生物学修士
1995-2003年 RCB-LIPIと国際協力機構(JICA)との共同プロジェクトコーディネーター
2003-2007年 インドネシア科学院ライフサイエンス、計画モニタリング・評価リーダー
現在、インドネシア科学院生物学研究所(LIPI)動物局(ボゴール動物学博物館)局長
韓国環境省国立生物資源研究所上席研究員。
植物の生物多様性と保全に関する論文を数々の学術専門誌に発表してる。
1979年10月鹿児島大学教養部講師 1983年10月同助教授 1998年8月同教授。
1982年以来48回インドネシア、マレーシア、ブルネイを訪問し熱帯林の植物生態と多様性の研究や教育を行った。その成果は熱帯関係の査読付き論文37編として発表した。2005-2007年 森林-土壌相互作用形の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究(環境省地球環境研究総合推進費)などの研究代表者を務めた。
現在は日本学術振興会 若手研究者インターナショナルトレーニングプログラムによる鹿児島大学の"熱帯域における生物資源の多様性保全のための国際教育プログラム"の主担当教員を務めている。
1951年生、1976年から(財)山階鳥類研究所研究員、1995年より同標識研究室長。
鳥類標識調査により鳥の渡り生態を研究している。国内をはじめアジア諸国において,鳥類標識調査の技術指導を実施している。
近年はツル類・アホウドリなどに関して,人工衛星を用いた電波発信機による渡りの追跡も行っている。またトキの人工増殖計画のための捕獲や中国における生 態調査,ヤンバルクイナの発見などに携わり,その他アホウドリ・タンチョウなどを含め希少鳥類の保護増殖事業に関わっている。
国立環境研究所生物圏環境研究領域長。
専門は植物生態学。植物の形態と資源獲得機能の研究、森林のダイナミクスと多種の共存メカニズムのシミュレーションモデルによる研究,絶滅危惧植物の個体 群動態など。大学院では関東地方の雑木林を放置した場合の植生の変化のメカニズムに関する生理生態学的な研究などで学位を取得。
1986年から国立公害研究所勤務。1990年の改組で国立環境研究所となる.1990年代にはシベリアの永久凍土地帯の森林調査にもかかわる.現在は管 理職業務のあいまに日本国内のシダの分布パターンに関する研究を少しずつ進めている。また,生物の分布データを利用して,さまざまな制約条件があるなかで の効率的な保護区をデザインする手法についても検討している。
1984年、環境庁(当時)入庁。富士箱根伊豆国立公園をはじめ各地の自然環境保全にかかる現地事務所、国土庁、外務省(在ケニア日本国大使館)のほか、環境省自然環境局計画課、野生生物課等の勤務を経て、2007年4月から生物多様性センター長。
環境省自然環境局生物多様性センター、総括企画官。
1994年九州大学大学院博士課程修了、博士(理学)、専門分野:動物生態学。
環境庁西表野生生物保護センター(イリオモテヤマネコ保護増殖事業担当)、JICAインドネシア生物多様性保全プロジェクト長期専門家(希少種保護担当)、環境省自然環境局野生生物課(種の保存法、CITES担当)を経て2006年より現職。
当日は吉野環境副大臣の出席のもと、合計128名の方々にご参加をいただきました。
基調講演で、兵庫県立人と自然の博物館館長岩槻邦男氏が「持続可能な発展のための生物多様性情報」の タイトルで講演したのをはじめ、ついで中国、インドネシア、韓国、ベトナムの生物多様性研究情報拠点からの専門家、 生物多様性条約事務局及びASEAN生物多様性センターの国際機関からの専門家、また我が国の分類学及び生態学の専門家10名に よる生物多様性情報整備と分類学能力向上プログラムの実施状況に関する講演とパネルディスカッションが行われました。
パネルディスカッションでは、保全の現場における生物多様性情報整備の必要性及び分類学的な能力の向上の 必要性について活発な議論が交わされました。
写真1:吉野環境副大臣の開会挨拶
写真2:パネルディスカッション
シンポジウム翌日には専門家会合が行われ、ESABII推進のための戦略案が議論され、プロジェクト目標、 さらに下位目標として、運営体制の確保、各国、関係機関のネットワークの構築、情報の共有化と提供、 生物多様性情報インベントリー整備や分類学能力向上のためのニーズ把握調査及び優先順位設定、具体的な事業実施に関する方針について 有意義な意見が交わされ、戦略案に対し貴重なインプットがなされました。
このシンポジウムと専門家会合で、各国・機関の方々から寄せられたご意見をもとにESABII推進のための戦略を策定し、 生物多様性情報インベントリーの整備と、分類学の能力向上のための地域行動計画策定とプログラムの実施を推進します。
東・東南アジアの生物多様性保全の推進と、生物多様性条約への貢献のため、国際協力体制を築いていきます。
〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
環境境省自然環境局生物多様性センター 担当者:鈴木、阪口
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